家事の時短ができる動線と注文住宅での収納スペースの考え方

家事の時短ができる動線

人が生活する上で建物の中を移動する経路を「動線」(どうせん)と呼びます。

間取りを考える際、この動線を予想してプランを練ります。

家族それぞれ一日の行動パターンは異なりますが、特に家事をまかなう人の動きは複雑になると思います。

 

ご自分で一日の行動を想像してみてください。

起床 → トイレ → 洗面 → 着替え → 朝食支度 → 朝食 → 皿洗い → 洗濯 → 掃除・お風呂洗い → 物干し  → 昼食 → 一休み → 買物 → 洗濯取り込み → アイロンかけ → 夕飯支度 → 夕食 → 皿洗い → 団欒 →  入浴 → 就寝

こんな感じでしょうか。(外に働きに行っている人、学校などがある人はまた全然違ってきますね)

買物以外は家の中をけっこう行ったり来たりしていると思います。

このように家事を行っているときの動きはキッチン、洗濯場、物干し場の行き来がその家庭によっては頻繁になり、この経路をできるだけコンパクトにまとめることが設計において重要です。

 

2階建ての場合、洗濯機が1階、物干し場が2階のベランダ、ということが比較的多いかと思います。

干す時と取り込む時の行ったり来たりが毎日必要、となります。

それなら洗濯機も2階に置けばスムーズかなと思いきや、今度はキッチンと離れてしまいます。

浴室も洗濯機と近い方が便利ですしね。

それではキッチンも2階にしてしまおう!となると…あら?全部2階にしたら老後はどうするの?!

 

高齢になった時のことを考えると、寝室とトイレは近接させることはもちろんのこと、これら一日の営みを、一つの階において無理なくこなせるようにしておくのが本来、理想です。

2階にLDKがある場合は老後どうするかを前もって考えておいた方がいいでしょう。

(1階だけで暮らせるような間取りをあらかじめ考えておければいいですね。)

家事もかなりの重労働です。

家事をする奥様(ダンナ様?)に感謝の気持ちを持って、家事の負担を減らせるような間取りを考えましょう。

 

収納が足りない新築の家はどうすれば

間取りを構成する要素のひとつに収納があります。

注文で建てる場合、とにかく収納がたくさん欲しいという意見が多いんです。

確かに、しまうスペースが多ければ物が増えても散らかる心配はありません。

また、来客時にはひとまず散らかっているものを押し込むことができるので、いざという時の強い味方かもしれません。

とはいっても、限られたスペースの中で限られた予算があってのことですし、居室とのバランスも考えなければなりません。

 

基本的な1軒分の収納物は?

実際、収納するものをあげてみましょう。

玄関、シューズクローゼット

靴(サンダルやブーツなどの季節物はしまっておくかもしれません)

靴のお手入れ用品、

傘、

コートや帽子(それぞれの家庭により玄関かも)

 

物置がない場合は、

ゴルフバッグ、

スキー板・スノーボード、

子供の一輪車やスケートボードなど、

自転車の空気入れ、

キャンプ道具、

外部で使う物などの仮置きも考えられます。(スペースが広い場合)

 

リビング

リモコン、

DVD、

ゲーム機、

固定電話・電話帳、(近くにモデムやルーターなど)

文房具・メモ帳、

薬箱、

花瓶など

 

ダイニング

食器・カップ、コップ類、

お茶のセット、

ポット、

お茶菓子、

カゴや入れ物、

 

キッチン(食品庫)

食器・カトラリー類、

食品(米、乾物、缶詰、水、酒類、調味料、ストックの食材、パンやお菓子類など)

調理器具(電子レンジ、トースター、鍋、フライパンなど)

タッパーやビンなどの入れ物、お弁当箱など

キッチン用品(ゴミ袋、掃除用品、洗剤、キッチンで使う日用品の備蓄類)

時々使う家電(ホットプレート、土鍋、フードプロセッサー等)

いただいた泥付きの野菜など→土間があると便利ですね。

 

納戸(どこの部屋でもない物)

掃除機や掃除用品、

新聞紙回収前の置き場所、

季節外のもの(扇風機、ファンヒーター、加湿器、除湿機、空気清浄機、ひな人形、五月人形など)

紙袋、

工具、

脚立、

裁縫道具やミシン、アイロン、

日用品のストック、

防災グッズ、

思い出の品(子供の成長のものやアルバム等)

 

和室(押入)

客用布団やシーツ類、

座布団、

桐ダンス…着物があるお宅なら

 

洗面脱衣所

洗剤のストック、

ハンガー、

タオル類、

バケツ、

お風呂掃除用具、

ドライヤー、

化粧品類など

 

各個人の部屋

バッグ、衣類、帽子、アクセサリーなどの身につけるもの、

趣味の収集物、

本、CD、DVD、

漫画、おもちゃ、ぬいぐるみなど

 

 

等々、見てみると収納するものは結構多いです。

気を付けていないとすぐに物は増えていきます。

収納スペースが多ければ、床面積が増えるし引越し代もかさむし全て予算に関係していきます。

住んでからも片付けに時間と手間がかかることになります。

 

また、使う場所の近いところへ収納するというのが上手な収納です。

これも頭に入れておきましょう。

無駄な動きが少なくすみ、結果的に時短になります。

これも家事のひとつ、掃除がやりやすくなるので主婦にとって重要です。

 

1ヶ所ずつの収納の大きさですが、奥行きがあると奥のものが取り出しづらく、片付けが苦手な人には便利に使えないかもしれません。

ウォークインクローゼットもたくさん収納できますが、人が入る(中を歩く)スペースが必要なので、面積が大きくなりがちです。

ウォークインクローゼットに窓を付けると、換気のためにはいいのですが、黒っぽい服は日に焼けるので注意が必要です。

また、北側の外壁面に収納を作ると、結露の原因、衣類や紙類はカビの原因になりますので、できれば外壁に面していない、温度差の少ない建物の中側の方の位置が好ましいです。

 

間取りを考える上での具体的な収納スペースの出し方を考えてみますと、まず最初に、現在持っている家具、家電品といった新居に持ち込む品物を全てリストアップします。

衣類などの身の回りのものも検討します。

さらに新たに購入予定のものも考慮します。

ここで肝心なことは、これらの品物が本当に新居に必要かどうか再考することです。

奥の方にしまい込んで何年も手を付けていないものってけっこうありますよね。

どうしても捨てられない思い出の品は別として、一年以上手付かずのものは基本的に不用です。

収納が足りなくても見直しすれば減らせるものです。

これを機会に思い切って処分する品定めも必要ですね。

 

このようにしてできた品物リストとそれを収納する場所を設計者に伝えれば、無駄なく収納スペースをつくることができるでしょう。

持ち込み予定のものは幅、奥行、高さなどのサイズも伝えるべきことです。

入らなかった、ということがないようにしましょう。

 

物はひとつ増えたらひとつ減らすようにしていかないと増える一方でいずれスペースがなくなります。

断捨離のいい機会になるかもしれませんね。

 

まとめ

家事動線が考えられた間取りは住み始めてからのストレスが少なく、暮らしやすくなります。

収納は今あるものを全てしまうという考え方をやめて、そのスペースに入る分だけを残す、という発想にすると良いのではないでしょうか。